お口の病気

■新型コロナウイルス感染症における胸部CT像の特徴について

米・Mount Sinai Health SystemのMichael Chung氏らは、Radiology(2020年2月4日オンライン版)に新型コロナウイルス(2019-nCoV)による感染症(COVID-19)の早期発見・診断に有用な胸部CT所見を説明する特別報告を掲載した。同氏は「迅速な治療開始のためだけでなく、患者の隔離、有効な公衆衛生サーベイランス、封じ込めと対応のためにも疾患の早期把握が重要だ」と述べている。

両側性すりガラス陰影や浸潤影などが特徴

 今回の後ろ向き症例集積研究は、放射線科医と診療チームがCOVID-19の画像所見に習熟することを目的としている。同氏らは、2020年1月18日~27日に中国の湖北・江西・山東の3省3施設でCOVID-19の確定診断が付いた入院患者21例(男性13例、平均年齢51.2歳:範囲29~77歳、全例が呼吸器分泌物検査で2019-nCoV陽性)に胸部CT検査を施行した。

 初回CT画像において①すりガラス陰影②浸潤影(consolidation)③すりガラス陰影または浸潤影を認めた肺葉数④肺全体の重症度と肺葉ごとの病変の程度⑤結節⑥胸水貯留⑦胸部リンパ節腫脹⑧肺気腫・線維化などの基礎肺疾患の有無−を評価した。また、その他の胸部異常所見についても記録した。

 COVID-19は、CT所見において一般的に両側性のすりガラス陰影と浸潤影を呈することが分かった(写真1〜5参照)。また、他の早期診断に有用と思われる特徴として、結節性陰影、網状影、病変の辺縁性分布が挙げられた。一方、空洞、不連続な結節、胸水貯留、リンパ節腫脹は見られなかった。

 経過観察CTを受けた8例中7例で、軽~中等度の疾患進行が気腔陰影の拡大と濃度上昇として確認された。このことから、Chung氏は「初回CT検査で異常所見がなくても、COVID-19を除外できるとは限らない」と述べている。

CTのみでの感染除外には限界

 21例中3例は初回胸部CT所見が正常であった。そのうち1例は、初回CT施行3日後の再CTで、右下葉に孤立性のすりガラス結節を認めた。Chung氏は「このパターンは、COVID-19患者の一部において放射線画像検査で最初期に現れる特徴かもしれない」と述べている。別の1例は、初回CTと4日後の再CTのいずれも正常であった。同氏は「このことは、COVID-19に対する胸部CTの感度、すなわち陰性的中率は完全ではないことを示唆する」と指摘している。

 これらの知見は、数日間の潜伏期間があることが関連している可能性があり、CTで異常が現れる前に症状が顕現する時期がある可能性が示唆されるという。同氏らは「治療後の経過を理解するにはさらなる研究が必要だが、中東呼吸器症候群(MERS)および重症急性呼吸期症候群(SARS)流行時の経験と画像所見は、今回の流行への対処でも役立つと思われる」と述べている。

COVID-19患者の胸部CT画像例

写真1. 29歳男性

肺炎CT像
接触経路不明。発熱と咳嗽を呈し最終的に集中治療室(ICU)入院。thin-section単純CT軸位断像で、(a)両肺における癒合性および孤立性のすりガラス陰影(白矢印)と浸潤影(黒矢印)の拡散、(b)右中葉と下葉における病変の顕著な辺縁性分布(矢印)が見える


写真2. 36歳男性

肺炎CT像
最近武漢市に渡航。発熱、倦怠感、筋痛を呈する。thin-section単純CT冠状断像で両肺の上葉に円形のすりガラス陰影(矢印)が認められる


写真3. 66歳女性

肺炎CT像
最近武漢市に渡航。発熱と痰を伴う咳嗽を呈する。thin-section小照射野単純CTの軸位断像で、右下葉にすりガラス陰影内の網状影と小葉間中隔肥厚(矢印)による線状影が見える


写真4. 69歳男性
肺炎CT像
最近武漢に渡航。発熱を呈する。thin-section単純CTの軸位断像で、下葉にすりガラス陰影の明白な辺縁分布(矢印)が認められる

写真5. 43歳女性
肺炎CT像
最近武漢に渡航。発熱を呈する。1月18日に撮影したthin-section単純CT軸位断像(a)では異常を認めないが、1月21日の再検査(b)では、右下葉の辺縁に円形の孤立性すりガラス陰影(矢印)が見られる

MTおよびRadiology 2020年2月4日オンライン版より引用