良い治療って何だろう? part 2

「良い治療って何だろう? part 2」

前回の良い治療って何だろう part 1 でも書かせていただきましたが、私たちはお口の専門家として責任をもった治療を行うということがとても大切です。

今ここに詰めてあったものがとれてしまったので、もう一度つけてほしいという患者様がいらしたとします。それを診た先生は、じゃあもう一度つけときましょうねと言ってすぐにつけてくれました。このような状況を見て皆さんは良い治療だとお思いになりますでしょうか。

詰めてあったものがとれてしまったのには何らかの原因があるのですから、その原因を調べ、きちんとその原因を取り除いてから再びつけてあげるのであれば良い治療と言えるのでしょうが、何の検査もなくつけてくれたとしたなば、それは決して良い治療とは言えないと思うのです。

別の状況で考えてみましょう。熱があるから解熱剤をくださいと内科に行ったら、先生が診察もせずに薬をくれたとしたら皆さんどう思われますでしょうか。きっと、これでいいのかしらと心配になるのではないでしょうか。

両者に共通していることは患者さんの言っていることに対して、何のためらいもなく、すぐに対応してくれているという点でありますが、患者さんに対して責任のある治療を行っているとは決していえないと思うのですが、いかがでしょうか。

このような治療になってしまう理由としては、治療を受ける患者さんの側にも問題があると思うのです。
なぜならば、どうしても歯科医学的にきちんとした治療を行おうとすれば、詰めてあったものをつけて欲しいといわれた場合でも虫歯の治療をして欲しいといわれた場合でも、もし歯周病の問題や歯根の中の問題があれば、それに対する説明をし、それを治してから銀歯さんをかぶせなくてはならなくなり治療時間が当然長くなってしまいます。

こうなると、患者さんの負担も大きなものになってしまうために、それに対して理解を示して頂けない患者さんもでてきてしまうということも事実なのです。
これでは、いくら真面目に治療を行おうと思っても、空回りになってしまいます。患者さんがはやく噛めるようにしてほしいということなのだから、すぐにだめになってしまったり、あとで腫れてしまったりするかもしれないけど、とりあえずとれたものだけもう一度つけてしまえば良いということになってしまうのです。

また、さらに悪いことに治療する側もそのような理由を盾にして、このような治療であってもしかたがないと、治療そのものの問題点に対して問題意識を持たなくなってしまうという悪循環も生まれてきてしまうのです。

しかし本当に大切なことは何なのかよく考えてみて下さい。歯科医療のプロフェッショナルとして、少しでも患者さんのためになる、患者さんの立場に立った、患者さんから信頼される治療を行うということですよね。

このように患者様に対して責任のある治療をしていくのであれば、時間がかかるということはある程度しかたのないことなのです。こういったことは、患者様にも是非とも理解をして頂かなければならないことでありますし、理解をしていただけるように私達も常に努力していかなくてはいけないことなのです。

また、逆に患者さんの要求を極力聞き入れてあげることができるのかどうかということも、とても大切な要件なのです。これは上記のことと相反することのように聞こえるかもしれないのですが、決してそうではありません。例えば、どうしても時間的に余裕がない場合などは、その決められた期間の中でいかに患者様の要求を満たす方法を選ぶことができるか、また、決められた治療費用などを提示された場合には、その限られた費用の中でどこまで患者様の要求を満たすことができるのか、など主治医の引き出しの多さを試される場面となります。

最近ではセカンドオピニオンという言葉を皆さんも時々耳にする機会があるのではないかと思うのですが、この言葉の本来の意味は「患者様が検査や治療を受けるに当たって主治医以外の医師に求めた意見、または、意見を求める行為」のことをいいますが、私はこの言葉があまりにも独り歩きをしていることに不安を覚えることがあります。

現在の主治医の先生が持っている引き出しが非常に少ない場合には、セカンドオピニオンとして主治医以外の医師に意見を求めることに意味がありますが、現在の主治医がその逆だとしたらどうでしょうか。
せっかく、主治医が様々な方面から考えて診断をしているにもかかわらず、それを理解できない引き出しの少ない医師のもとへ意見を求めにいってしまったとしたら患者様は迷うばかりです。

当院のポイントにも書かせていただきましたが、患者様を迷わせないためにも確実なインフォームドコンセント(説明と承諾)が必要なのです。